公開日 2025.06.23

デジタルマーケティングとは

デジタルマーケティングとは、インターネットやITなどの「デジタル技術」を駆使して取り組むマーケティングです。
近年あらゆる業界・分野で盛んに取り組まれているデジタルマーケティングについて、基礎から解説いたします。

デジタルマーケティングの概要

そもそも「マーケティング」は、「商品・サービスの提供により、顧客/企業/社内にとっての利益を最大化するための活動」を指します。
それらの活動のうち、デジタル技術を活用するものを「デジタルマーケティング」と呼びます。

マーケティングは非常に大きな概念であり、デジタルマーケティングもまた幅広い手法や施策が存在します。より想像しやすいように、言葉の定義ではなく具体的な例を見ていきましょう。

デジタルマーケティングで行われる施策として、次のような例が挙げられます。

  • 特定のキーワードの検索結果で、自社サイトが上位に表示されるようサイトを調整する
  • Webサイトや動画、アプリに広告を配信する
  • 企業が公式SNSアカウントを運営する
  • Webアンケートを実施し、顧客のニーズを調査する

「マーケティング」と聞くと、企業が顧客に対して認知度獲得や販売促進などのために行う活動と思われがちです。
しかし実際には、商品・サービスの創造や改善、社内に向けた業務改善の仕組みなども、マーケティングに含まれます。

顧客および企業の利益を最大化するためには、このような社内外、双方向のマーケティングが欠かせません。
デジタルマーケティングは、デジタル技術をもとに様々な手法を活用できるため、現代のマーケティングに有用な存在です。

デジタルマーケティングの位置づけ

マーケティングには、デジタル活用以外の方法もあります。例として、テレビ、新聞、ラジオなどのマスメディアを用いたマスマーケティングがあります。
また、「Webマーケティング」という言葉もあり、「デジタルマーケティング」と混同されがちです。Webマーケティングは、デジタルマーケティングの一種です。あらゆるデジタル技術の中でも、WebサイトやWeb広告などのWebを駆使したマーケティングです。

これらのマーケティングは、強みやリーチできるターゲットにそれぞれ違いがあり、目的に応じて使い分けられます。
また、テレビCMの放映とWeb広告を併せて活用するなど、幅広い施策を実施する企業も少なくありません。

デジタルマーケティングで活用される手法

デジタルマーケティングは、Webマーケティングを内包することからも分かるように、多くの施策を活用します。
また、デジタル技術は日々発展を続けており、それに伴ってデジタルマーケティングの施策も多様化しています。

ここでは、デジタルマーケティングで活用される手段の中から、代表的なものをピックアップしてご紹介いたします。

オウンドメディアを活用した情報発信

オウンドメディアとは、企業が自社で保有しているメディアのことです。
デジタルマーケティングで扱うオウンドメディアには、企業のホームページ、ブログサイト、公式アプリなどがあります。

このようなオウンドメディアは、幅広いユーザを対象にリアルタイムの情報発信を行うことができます。
そのため、「企業から顧客」や「企業から従業員」、「企業から社会」などに向けた情報発信を通じて、あらゆるマーケティングに活用できます。

施策解説
SEO(検索エンジン最適化)「自社の提供するものを求めているユーザが検索するワード」に対して、検索結果での上位表示を目指す。
コンテンツマーケティングユーザの求める記事や資料、動画などの情報を提供し、関係を構築する。
LPO(ランディングページ最適化)ユーザが最初に見るページを改善し、コンバージョン(購入、お問い合わせなど)につなげやすくする。

デジタル広告の配信・運用

デジタル技術の普及とともに、広告の種類も多様になりました。
広告の目的は、商品・サービスの認知度の向上や販売促進だけに留まりません。
商品・サービスを訴求するのではなく、会社のブランドや社会貢献などの内容を打ち出した広告も多く見られます。
広告は、企業の採用活動や社内向けマーケティングにも有効に活用されているのです。

施策解説
検索連動型広告(リスティング広告)検索ワードの内容に連動して、GoogleやYahooなどの検索結果画面に表示される広告。
ディスプレイ広告Webサイトやアプリを閲覧している際に、広告枠に表示される画像形式の広告。
SNS広告SNSを閲覧している際に、広告枠に表示される画像・動画形式の広告。
動画広告テレビCMのように差し込まれる動画形式の広告。

SNSマーケティング

特にBtoCでは、X(旧Twitter)、Facebook 、Instagram、TikTok 、LINEといったSNSアカウントを開設する企業が増えています。
SNSはリアルタイム性が高く、ユーザと直接コミュニケーションを取る手段として有効です。
そのため、即時の情報発信やユーザニーズの収集・把握にも役立ちます。
また、ユーザ間で情報が拡散されるなど、他の施策とは異なるチャンスを獲得できる期待もあります。

施策解説
公式アカウント運用SNSアカウントを通じて情報発信やキャンペーンを行い、ユーザとの関係を構築する。
インフルエンサーマーケティングSNSなどで影響力のある個人に、商品やサービスを紹介してもらう。

メールマーケティング

特定の対象にメールを配信することで、様々な状況・段階のユーザに接触することができます。
さらに、メールの内容をユーザの段階やニーズに応じて柔軟に使い分けることで、より効果を発揮します。
メールは見込み顧客や既存顧客などを対象に、関係を築き維持していく「ナーチャリング」の手段として、特に強みを持っています。

施策解説
メールマガジン定期的な配信により、ユーザとの関係を維持・強化する。
ステップメールユーザの段階に合わせた内容のメールを配信し、行動の意欲を引き上げる。
ターゲットメールユーザニーズに合った内容のメールを配信し、ユーザの満足度や信頼を高める。
休眠発掘メールユーザとの関係を再構築し、行動に繋げる。

動画マーケティング

動画マーケティングとは、動画コンテンツを活用して情報を伝える手法です。
デジタルマーケティングで扱う動画には、YouTubeでのプロモーション動画、SNSに投稿するショート動画、企業サイトに掲載する紹介動画などがあります。
このような動画コンテンツは、視覚や聴覚に訴えることで印象に残りやすい特長があります。
そのため、「商品やサービスの理解促進」や「ブランドイメージの浸透」、「ユーザの共感を得るコンテンツの配信」など、幅広いマーケティングに活用できます。

施策解説
商品・サービス紹介動画商品・サービスの特徴や使い方、メリットなどを簡潔に伝え、訴求する動画。
SNS向けショート動画Instagram ReelsやTikTok、YouTube Shortsなどに最適化された短尺の動画。
ウェビナー・セミナー動画オンライン上で配信する講演形式の動画コンテンツ。

データの分析

デジタルマーケティングはあらゆる施策を駆使することができるため、より効果的な施策を特定し、改善していくことが重要です。
このサイクルを回すために必要なのが、データに基づくユーザ情報の分析です。
デジタルマーケティングにおけるデータ分析には、Webサイトや広告のアクセス解析だけでなく、店舗や営業活動などのオフラインで得られるデータも含まれます。
また、これらのデータ分析で得られた情報は、ターゲットの再考や訴求方針の変更など、デジタルマーケティングに限らずマーケティング全体の運用に役立てられます。

施策解説
Webアクセス解析Webにおけるユーザの属性や行動などを、専用のツールを用いて分析する。
オフラインデータの解析来店データ、営業活動ログ、アンケート結果、IoT機器により収集された情報をもとに分析する。

マーケティングオートメーションの活用

マーケティングオートメーションとは、マーケティング業務を自動化・効率化することを指します。
マーケティングオートメーションを促進するため、MAツールをはじめとした様々なデジタル技術が活用されています。
これらを取り込んだ仕組みづくりも、デジタルマーケティングとして取り組まれています。

施策解説
メールの配信を自動化するCRM(顧客関係管理)などと連携し、顧客リストに対応したメールを自動配信する。
行動喚起のバナーを自動で表示するWebサイトを閲覧しているユーザの行動に応じて、内容の異なるバナーを出し分ける。
顧客データ管理・分析を効率化するCDP(カスタマーデータプラットフォーム)などと連携し、顧客情報に基づいた施策の検討~実行までを効率化する。

デジタルマーケティングの歴史

ここまで述べてきたデジタルマーケティングによる様々な施策は、今やほとんどの人が日常的に目にしているものばかりです。では、デジタルマーケティングはどのようにして広まり、当たり前の存在になっていったのでしょうか?

デジタルマーケティングが始まったのは、インターネットやパーソナルコンピューター(PC)が一般浸透し始めた1990年代です。自社のWebサイトを立ち上げる企業が増加しはじめます。
2000年を過ぎたころには、インターネット上で商品・サービスを買うことのできるECが普及します。
この頃には、SEOやデジタル広告の重要度も認識され始め、デジタルマーケティングが確立されていきます。
また、2007年にiPhoneが登場し、2017年にはスマートフォンの普及率がPCを上回ったことで、デジタルマーケティングの手法も一層多様化しました。

デジタル技術の発展は消費者の行動を変化させ、それに対応すべく、デジタルマーケティングも共に発展してきたのです。

デジタルマーケティングが重視される理由

企業がデジタルマーケティングに注力して取り組んでいるのは何故でしょうか?
その理由は、デジタルマーケティングならではの強みやメリットにあります。

リアルタイム性が高い

デジタルマーケティングを活用することで、企業はスピーディーなマーケティング施策の実行ができます。
また、それらを受けたユーザからの反応もリアルタイムで観測することができ、施策の改善に役立てられます。

デジタルマーケティングのリアルタイム性は、マーケティングのPDCAサイクルを円滑に稼働させ、その質を高めていくのに有効です。

ターゲティングの精度が高い

「特定の条件に当てはまるユーザを対象に情報発信を行いたい」というケースで有効なのがターゲティングです。
デジタルマーケティングでは、年齢・性別・居住地などの条件で対象のユーザを絞り込むことができます。
商品・サービスのターゲットへの接触を、より容易かつ精度の高いものにしています。

それにより、ターゲット設定が適切であれば、効果を得られるのも早い特長があります。

有益な情報を得やすい

デジタルマーケティングでは、ユーザの属性や行動をリアルタイムに取得することができます。
また、得られる情報は非常に膨大です。

これらの情報を分析することで、ユーザのニーズや有効なアプローチ方法などを見つけることも可能です。

そのため、得られた情報は量・質ともに有益であり、マーケティング活動全体において役立てられます。

デジタルマーケティングのこれから

デジタル技術の発展とともに手法が多様化しているデジタルマーケティングは、これからも発展を続けていくと考えられます。

特に今注目されているのは、AIの活用です。

近年では、IoT技術の進歩により、情報収集が可能なデバイスの種類も増加しています。
このようにあらゆる方面から情報を収集できることで、膨大なデータを分析する負担が大きくなっています。
そこで、蓄積したデータを分析するAIの活用が進められており、これまで以上にデータの活用可能性が広がります。

また、仕組化された施策の実行をAIが担うことで、ユーザ一人ひとりに最適化されたマーケティング活動なども期待されています。

これらのAI活用を実現するため、デジタルマーケティングで取り組まれているものの一つに、LLMO(大規模言語モデル運用)があります。
LLMOとは、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を業務に安定的かつ効率的に組み込んで運用するための仕組みや手法のことを指します。

これからのデジタルマーケティングには、AIの活用がより盛んになっていくことが予想されます。

まとめ

マーケティングは、技術の発展やそれに伴う消費者の行動変化に応じて、その手法や施策を広げてきました。
私たちの生活に今やなくてはならないデジタル技術も、マーケティングに影響を与えた存在の一つです。

デジタルマーケティングは、変化する時代において有益なマーケティングです。
これからもその手法や施策は、時代とともに変化を続けると考えられます。

執筆・監修

執筆者:関根(中心設計株式会社 コンサルティングディレクター)

最先端の研究分野をターゲットにしたマーケット開拓が得意。理系のバックグラウンドを活かし難解な論文や研究資料を読み解く。当社新卒入社。動物が好き。

監修者:上田 裕輔(中心設計株式会社 代表取締役社長 / Webコンサルタント)

東証一部上場の専門商社にて営業を経験後、Web系企業を創業。その後再度独立し、大手メーカーのグループ全社/グローバル企業/中堅・中小企業/中央省庁等のWebコンサルティング等に従事。特に産業機械・研究機器をはじめとする専門性の高い領域を中心に18年で500件超のプロジェクトを経験。日本マーケティング学会 会員。

※この記事は事実及び、一定の基準を満たす実務経験に基づき、客観的な視点の元執筆されています。(メディアポリシー